フィルムの高級コンパクトカメラのGRですが、その特徴は何と言ってもレンズの描写力です。とにかく写りが良い。絶対に設計者にカメラ好き、写真好きな方がいたと思います。
このレンズは解像度が高いだけではなく、絞りが変更されても変わらない描写力、歪曲収差の低減、周辺光量比の確保など、具体的な改善が挙げられます。
上図はレンズの断面図ですが、なかなか面白いです。この断面図から色々と想定できます。
まず、基本構成は対称型のレンズです。絞りの前の前群と、後群が凡そ対称型です。凡そというのは、前群の三枚の貼り合わせレンズが、絞りの後の3枚貼り合わせと絞りを挟んで完全に対称ではなく、同じ向きを向いているので前群がひっくり返している形です。
前面が負の要素の凹レンズを取り入れる事で画面の4隅まで高い性能を保てます。よく見ると7枚のレンズがありながら、凸レンズが二つしかありません。これらの凸レンズは光学パワーを確保するために高屈折が必要ですが、軸上色収差や倍率色収差の低減のために低分散ガラスを使用しています。
最も大きい最後の一枚のレンズは凹レンズなので、テレフォト化となりバックフォーカスを短くしています。今ではこの手法は携帯電話向けのレンズでよく見ることができます。この凹レンズで生じる収差は、前面の凹レンズで補正しています。
更に収差補正に寄与しているのが二枚の非球面レンズで、一枚目と最終レンズが非球面レンズです。
芯出しの調整を最小限にするために3枚レンズの接合レンズが2セットもあり、更にマルチコーティングも多くの面に施されているためフレアの低減にもなります。
20年前にこれだけのレンズを発売しています。Lマウントレンズも発売されていますが、私が欲しい28mmレンズの筆頭です。
コメント
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