iPhone XRがまもなく発売されます。発音は『アイフォン・テン・アール』です。
iPhone Xの廉価版のようで、実はそうではないモデルです。
iPhone XRは廉価版ではありません
iPhone Xを廉価版と呼べないところがあります。
- フラグシップのXSとXS Maxと同じCPUのA12を持ち合わせています。
- フラグシップのXSとXS Maxと同じ広角カメラのスペックを持ち合わせています。
- フラグシップのXSとXS Maxと同じFace ID用のセンサー類を持ち合わせています。
差があるとすると、
- 望遠レンズが無いこと
- スクリーンが有機ELディスプレイでは無いこと
くらいです。
iPhone XRの色は良いですね。黒はパッと見ではXSと識別できませんし、白はむしろXSの白より鮮やかですし、Product Redの赤の深みのある色は大好きです。
前にも言いましたが、
実は一点、XRが他のXモデルよりも勝るところがあります。バッテリーがより長持ちなのです。そう、iPhone XS MAXよりも。インターネットブラウジングに関しては、XS=12時間、XS Max=13時間、XR=15時間です。スペック的には埋もれているので、それを理由にXRを買う方は少ないでしょう。AppleとしてもXRのバッテリーを大体的に宣伝すると、より利益の出るフラグシップモデルの売上や利益が落ちるので宣伝しないのでしょう。
『何か廉価版となるスペックがあるのでは』と思ってしまいますが、それが無いのです。厳密に言えば棲み分けは可能かもしれませんが、本当に世の中の他の製品群の廉価版との差が極小です。
iPhone Xシリーズの価格構成
iPhone XRはとてもいい製品です。そりゃあXSやXS Maxの方がいいに決まっていますが、価格比較したらどうでしょうか。
米ドルでは以下の通りです:
64 GB | 128 GB | 256 GB | 512 GB | |
---|---|---|---|---|
iPhone XS Max | $1,100 | — | $1,250 | $1,450 |
iPhone XS | 1,000 | — | 1,150 | 1,350 |
iPhone XR | 750 | 800 | 900 | — |
64 GBとの差 | $50 | $150 | $350 |
日本円に置き換えると:
64 GB | 128 GB | 256 GB | 512 GB | |
---|---|---|---|---|
iPhone XS Max | ¥124,800 | — | ¥141,800 | ¥164,800 |
iPhone XS | ¥112,800 | — | ¥129,800 | ¥152,800 |
iPhone XR | ¥84,800 | ¥90,800 | ¥101,800 | — |
64 GBとの差 | ¥6,000 | ¥17,000 | ¥40,000 |
表をよく見るとわかるのですが、容量別でiPhone XSとiPhone XRの実用的な価格差は顕著です。
容量だけで言うと64GBはいいベースラインですね。一昔前の2015年のiPhone 6Sの容量は16GB、2016年のiPhone 7は32GBでした。私がいつも狙うのは『間』の容量です。16GB→32GB→64GBなら32GBを選びます。32GB→64GB→128GBならば64GBを選びます。
そうなると、iPhone XSでは256GBモデルを、iPhone XRでは128GBモデルを選ぶ事になります。そうなんです、iPhone XRのみで64GBの『ひとつ上の容量』を選べるのです。その価格差は倍の容量でたったの6000円です。
これがiPhone XSとなると、ベースラインの64GBモデルの次のモデルが256GBですから、実用的な価格差は(4倍の容量とは言え)17000円です。iPhone XRの『モデルアップ』より1万円高価と言う見方ができます。
これで行くと私の『ひとつ上の容量を買う』方針からすると、iPhone XSとiPhone XRの価格差は64GBでの比較の『112,800円対84,800円』の2.8万円差ではなく、実質『129,800円対90,800円』の3.9万円差なのです。(iPhone XS Maxとの差は実質5.1万円)
価格的にはiPhone XRは廉価版ではなく、コストパフォーマンスの良い製品とも見れます。それだけiPhone XSとiPhone XS Maxの容量別価格に差があるのですね。
ではその128GBのiPhone XRと256GBのiPhone XSの3.9万円の価格差には何があるのでしょうか。
- カメラの差:XRは広角カメラのみ、XSはデュアルカメラ
- ディスプレイの差:有機ELではなく液晶ディスプレイ、3D Touch無し(でもXRの方がサイズは大きい)
- 材質の差:ステンレスではなくアルミニウム
- サイズの差:XSの方が少し小さい
- ハードディスクの容量半分
- (バッテリーはXRの方が持ちが良い)
上記の差に3.9万円以上の価値を私が見い出せれば、iPhone XSを選択する事になります。
iPhone XRのカメラ
カメラの方は、FaceTime用のカメラに関してはXSとXRは全く同じものです。カメラも同じですが、センサー類も同じです。
裏側の広角カメラの方はXSと比較して、XRはレンズだけではなく、センサーが同じです。ただ一つ、カメラに関しては望遠レンズがないのです。普通の静止画ならば、その差は画角の違いとして現れ、撮影している範囲が違うので写真として印象が大きく変わります。
ポートレイトモードが少し面白いですね。iPhone XSとXS Maxはポートレイトモードでは望遠レンズを使います。対して、iPhone XRは広角レンズを使います。iPhone XSもポートレイトモードで広角カメラを計算の類いの処理には使っているかもしれませんが、撮影は望遠カメラを使います。
iPhone XSとXRの広角レンズはF/#=1.8です。対して望遠レンズはF/#=2.4です。これはおよそ一段の明るさの差な上に、広角カメラのセンサーの方がセンサーサイズが大きく、各ピクセルが大きいです。ピクセルが大きいと、高感度に強いカメラになります。巷のレビューを見ると、どうやらiPhone XRは広角カメラをポートレイトモードに使わざるを得ない事で、ポートレイトモードにおける暗所での高感度を得たかもしれません。とは言え、明るい条件でのポートレイトモードは望遠カメラの方が広角カメラよりは良いでしょう。
最終的には、iPhone XRとiPhone XSのカメラの差は単純に望遠カメラの有無です。望遠カメラに数万円の価値があると見るのならば、そちらの方が良いでしょう。でも望遠カメラにそれ程の必要性がなければ、iPhone XRの方がいいのではないでしょうか。
参考:Austin MannのiPhone XRカメラレビュー
iPhone XRのディスプレイとバッテリー
カメラの違いが最も顕著のiPhone XRとiPhone XSですが、その次くらいに異なるのがディスプレイです。XSは有機ELディスプレイであり、XRは液晶ディスプレイです。有機ELの方がコントラストが高く、黒が締まっていて見た目は確かに美しく、その自発光するその構造エッジのベゼルは小さくできます。
ただし、液晶ディスプレイにも利点はあり、例えば電力消費は液晶の方が低いです。実はiPhone XRはXシリーズ中、最もバッテリーが長持ちなのです。
ディスプレイに関してもう一つの違いはiPhone XSは3倍RetinaでiPhone XRは2倍Retinaです。ピクセル数で言うとiPhone XRは1インチ辺り326ピクセルでiPhone XSは1インチ辺り458ピクセルです。もちろんディスプレイの解像度が高い程美しいのですが、その分電力消費は大きくなります。
実は1インチ辺り326ピクセルは最初期のRetinaディスプレイと同じ解像度で、なんと2010年発売のiPhone 4と同じです。しかしAppleはこのディスプレイはiPhoneでの液晶ディスプレイで最高の美しさと言うので、ピクセル解像度がディスプレイの美しさの全てではないという事でしょう。
もう一つディスプレイの違いと言えばベゼルの太さで、iPhone XRの方がベゼルが太いです。ただし、ケースなどを使った場合は違いがわかるか微妙なところでしょうね。それよりも液晶ディスプレイでありながらほぼ全部がディスプレイというのが凄いです。Appleらしく、より安価な液晶ディスプレイでも高級感と高性能を実施しています。
後は見た目ではなく機能的な部分ではiPhone XRは3D Touchがない事でしょうか。この統一感の無さはAppleらしくありません。3D TouchがあるiPhoneもあれば、無いのもある。iPadに至っては全てないです。つまり、iOSデバイスで動くソフトウェアを開発する限り、3D Touch頼りのアプリを作ってしまうと、一部のデバイスでは思い通りに動かない事になります。3D Touchがない事は最終的には些細な事かもしれません。
AppleのホームページではiPhone XS、iPhone XR、iPhone XS Maxのディスプレイサイズはそれぞれ5.8インチ、6.1インチ、6.5インチとしています。でもページ下方に小数点を追加して5.85インチ(iPhone XS)、6.46インチ(iPhone XS Max)、6.06インチ(iPhone XR)とあります。iPhone XSとiPhone XRの差は小数点を一つまで取ると0.3インチ差ですが、小数点を二つまで取ると0.21インチ差です。どちらも正解なのでしょう。でも少し気になりますね。
あまり公表されていませんが、iPhone XRとiPhone XSではメモリの容量が異なります。iPhone XSとiPhone XS Maxは4GBのRAMがありますが、iPhone XRは3GBです。この容量差がクリティカルなのかどうかはわかりませんね。ひょっとするとRAMはディスプレイを駆動するのに必要かもしれませんね。最近の半導体チップはCPUもGPUも全てメモリを共有していますので、iPhone XSにはディスプレイの解像度が高いためにより多いRAMが必要なのかもしれません。また、RAMは電力をしようしますので、ここでもiPhone XRのバッテリーの長さの要因があるのかもしれません。
iPhone XRのサイズと色、外観等
サイズ的には、iPhone XRはiPhone XSとiPhone XS Maxの間くらいの大きさです。とは言え、ディスプレイのベゼルの関係でディスプレイ比は少し違いますね。
またiPhone XRとiPhone XSの大きな違いは、当たり前ですが色にもあります。
iPhone XSは今まで通りのシルバーとスペースグレーで、新しくゴールドが加わったわけですが、iPhone XRは様々な色があります。
黒はXSと似ていますね。パッと見はわからないのではないのでしょうか。
白はXSのシルバーよりも明るそうで、黄色、青色も好きな色です。ただし、私が最もいいと思う色は間違いなくProduct Redの赤色です。
とは言え、多くの方はiPhoneをケースに入れるのでしょうね。そういう意味では色はあまり関係ないのでしょうか。クリアなケースならば意味はあるのかもしれませんが。クリアケースやバンパーなど、背面が見えるようなケースをAppleが出せばいいのではないかと思いますが、いかがでしょうかね。
まとめ
これでiPhone XRとiPhone XSの差を羅列した形になりましたが、それ程多くないですね。むしろiPhone XRとiPhone XSが共有している部分が、iPhone XRを際立たせているのではないかと思います。散々書いていますが、カメラ、A12チップ、Face IDカメラ類、ステレオスピーカー、等々。
そんなに多くの差は感じないので、iPhone XSが一級品でiPhone XRが二級品という印象はありません。同じく一級品の中での比較だと思います。iPhone XSの方がステンレススチール材や有機ELディスプレイがあって高級部品を使っており、対してiPhone XRはよりスタンダードっぽいかもしれません。
少なくとも、去年のiPhone XとiPhone 8の差の大きさと比べたら、iPhone XRとiPhone XSの差は微々たるものと感じてしまいます。それなのに、iPhone XRはiPhone 8の価格帯です(一年分のインフレを考慮すると、の話です)。
コストパフォーマンスで言えば、iPhone XRは最も高いiPhoneと言えるのではないでしょうか。