Appleの驚異的なカメラ性能は業界的にどれだけのリードがあるのでしょうか。
私はレンズ設計を生業としているレンズファンですが、同時に写真撮影も好きです(下手ですが)。更に、コンピュータ関連のファンでもあるので、写真と演算の融合も興味深いです。
AppleはiPhoneで、本当に素晴らしいカメラを提供しています。iPhoneは名称こそ電話でありますが、同時に多くの機能を備えています。素晴らしい静止画からスローモーションのセルフィー、信じられないレベルの動画機能まで、アップグレードは大いに価値があると思います。
以前はiPhone(や他の携帯電話)は電話にカメラか付いていましたが、今はカメラに電話機能が付いているイメージです。加えて、ショートメッセージや万歩計、財布や定期券にまでなる代物です。
最近の機能はDeep Fusionと呼ばれるものだそうです。九つの画像を組み合わせて鮮明な画像を得るものだそうです。写真を撮ろうとしている時点で、シャッターボタンを押す前に八つの写真を撮り、更に長めの露出で九枚目を撮影し、全て組み合わせるそうです。この結果、ディテールが残されていながらノイズが少ない画像が得られるそうです。Phil Schiller氏をして、『マッドサイエンス』と言わしめた機能です。
Appleがカメラの性能に固持するのも理由があるのではないかと思います。中国にiPhoneを売る場合は、セールスポイントはCPU/GPU性能とカメラしかないのだと思います。中国においてiPhoneはカメラ性能と演算性能が重要です。iOSに関してはそれ程注目されないのではないのかと思います。例えば、iOSのApp Store、iMessage、Apple Payなんかは中国内WeChatやAliPayがあるので見向きもされないかもしれません。
そうなると今はCPUが他社の先を行っているのでいいですが、3カメラユニット自体はそれ程珍しい訳ではありません。PixelにおけるGoogleの演算力も高いですし、Samsungの半導体もいずれAppleのA系列チップ程高性能になるかもしれません。
では、三ヶ月程使ってみて、iPhone 11 Proのレンズは日々の写真を撮るために使っています。もはやビジュアルメモになっています。Ricoh GR Limitedを持ち歩かなくなり、そのカメラからの写真も減り、GRIIIを意欲が少し薄れてきています(Limited待ち)。iPhoneだけでも、標準画角のポートレートレンズ、広角レンズ、そして超広角レンズを備えており、演算処理も豊富で背景ボケや4K動画も撮れたりするので、今後のデジタルカメラに求めるものは、『iPhoneにできない事』が一つの基準になるかもしれません。
これによって何が変わるかと言うと、思考が変わったかもしれません。スマートフォンによって、カジュアルに写真を楽しむ方々がコンパクトカメラから遠ざかる印象です。こういった人は写真自体に興味がない訳ではないと思います。より簡単に写真を撮り、かつ知り合いや家族と共有したい人達です。ワタクシみたいに50mmレンズを5本撮り比べたりしない人達です。
私自身はまだまだ『カメラだけ』に必要性と楽しみを見出しているので、しばらくは昔ながらのカメラを使うと思います。最たるものは望遠レンズの撮影でしょうか。動画に関しては、旧来の静止画カメラに大変優秀な動画機能を備えているデジタルカメラが存在しますが、私は動画は商業目的では撮らない予定なのでiPhoneの動画機能が大変優秀に見えます。子供が遊んでいる動画や、子供の発表会の動画とかは十分かもしれません。
スマートフォンフォトグラフィーは性能に対して十分です。古典的なカメラのワークフロー(ファインダーを覗く、ピントを合わせる、露出を合わせる、物理的なシャッターボタンを押す)にどこまでこだわるか、が意外な分かれ道かもしれません。そういった部分を取り除き、純粋に画像を見る限りは旧来のデジタルカメラはどんどんニッチになっていくかもしれません。