ダブルガウスレンズとゾナーレンズの違いについて。

このブログでは日々の考えていることや興味のあることを書き留めていますが、別で英語の光学設計のサイトも運営しています。
以前、光学設計ソフトを使わないEXCELでの光学設計手法を紹介したり、光学設計の仕様を突き詰める方法を紹介したり、レンズ設計の種類を時代毎に紹介してレンズ体系図を作ったりしました。
レンズ体系の中で重要な位置付けなのが、所謂『標準レンズ』と呼ばれる分類です。
その標準レンズですが、三枚レンズのトリプレットや四枚レンズのテッサーの後継者となる二つの大口径の標準レンズの争いがありました。
Summicron 2/50
Sonnetar 1.1/50
ガウスレンズとゾナーレンズです。

標準レンズは画角が標準域であり、全角で40度から60度程度の画角のレンズのことを指すことが多いようです。人間の視野の範囲に近いものです。
私はそれに少しだけ別の意味を持たせて、常用できるレンズと解釈しています。
今まで標準領域の画角のレンズは多くありましたが、ダブルガウスレンズとゾナーレンズはその中でも大口径な明るいレンズだったのです。

Mandler designed Summicron 2/50 report
(click to enlarge)
(Top, from left to right: Lens layout, Ray fan, Spot diagram)
(Bottom, from left to right: Field curvature, Distortion, Longitudinal aberration, Lateral colour)

sonnar f1.5 report
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(Top, from left to right: Lens layout, Ray fan, Spot diagram)
(Bottom, from left to right: Field curvature, Distortion, Longitudinal aberration, Lateral colour)

DoubleGauss1text.svg
By Paul1513 at en.wikipedia, CC BY-SA 3.0, Link

ガウスレンズはルドルフによって設計されましたが、元々はその半分である対物レンズをガウスが設計しました。
このレンズを対で使うためにひっくり返したのがクラークです。ルドルフは更にペッツバール和を減少させるためにメニスカスレンズを厚くし、色収差を低減するために接合レンズとしました。
弱点があるとすると、コマ収差の発生で、今後のガウスレンズの設計はこのコマ収差との戦いと言っても過言ではありません。高屈折率のガラスや反射防止コートの発明で発展していくのです。

Double Gauss by Wakiyama USP4448497
Nikkor design, Wakiyama US4448497 (1981)

対してゾナーは天才ベルテレが設計したレンズです。過去のエルノスターの発展レンズですが、高級なガラスを用いずこれだけの高性能で明るいレンズを設計できたのです。

Ernostar GB237212
Ludwig Bertele’s Ernostar design, GB237212 (1925)

sonnar f2
Ludwig Bertele’s Sonnar design, DE570983 (1931)

sonnar f1.5
Ludwig Bertele’s Sonnar F1.5 design, FR837616 (1937)

これらのレンズを比べて見ると、面白いです。

Mandler designed Summicron 2/50 report
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(Top, from left to right: Lens layout, Ray fan, Spot diagram)
(Bottom, from left to right: Field curvature, Distortion, Longitudinal aberration, Lateral colour)

sonnar f1.5 report
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(Top, from left to right: Lens layout, Ray fan, Spot diagram)
(Bottom, from left to right: Field curvature, Distortion, Longitudinal aberration, Lateral colour)

ガウスレンズはバックフォーカスが長く、ゾナーは球面収差の補正が優れています。
ガウスレンズはより対称に近いため、コマ収差、歪曲収差、軸上色収差が優れています。
実は二眼レフなどのプラナーレンズの時代からガウスレンズが使われていたため、歴史はガウスレンズの方が古いですが、いつしかゾナーが使われるようになりました。最初はツァイスのゾナーがライカのガウスレンズよりも勝っていました。
ガウスレンズは高屈折率のガラスや反射防止コートの発明で発展していきました。
ゾナーのバックフォーカスの短さはレンジファインダーカメラには問題ありませんでしたが、ミラーのある一眼レフカメラでは使いにくくなります。
ただし、コーティングが発展したのちは、ゾナーの空気面の少なさのメリットが影を潜め、標準レンズがガウスタイプに決定しました。
このように、レンズ断面を観察することで多くの事がわかります。英語のサイトでは更に細かく性能調査をしています。
光線図を見ることでレンズを観察するのが楽しいです。レンズの屈折率とレンズ構成、光線の通り方で様々な事がわかります。観察力こそレンズ設計に大事なスキルだと思います。

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