Appleが2018年のiPhone XSで「Max」という名称を導入したとき、その命題は今年のiPhone 12とiPhone 12 Miniのそれとよく似ていました。iPhone XSとiPhone XS MAXの唯一の違いはサイズでした。昨年のiPhone 11 ProとiPhone 11 Pro Maxでも同様でした。カメラシステムも同じでした。
新しいiPhone 12のとiPhone 12 Proの差はなんなんでしょうか。端的に言うとカメラだと思うのですが、ちょっと比べてみましょう。
自撮り側のカメラは全てのiPhone 12系列のモデルで同一に見えます。
超広角 0.5x のカメラシステムも同様に全てのiPhone 12系列のモデルで同一に見えます。
最も使われるWIDE、広角レンズ (1×)のカメラシステムも全モデル共通に見えます。iPhone 12、iPhone 12 Mini、そしてiPhone 12 Proで同じで、iPhone 11 Proの1×広角レンズよりも27%多くの光を取り込む新しいƒ/1.6レンズを搭載しています。iPhone 12 Pro Maxには同じƒ/1.6レンズが搭載されているが、他のモデルに搭載されている1×カメラセンサーよりも実に47%大きい異なるセンサーが搭載されています。この大きなセンサーは同じピクセル数を持っているのですが (12 MP = 4032 × 3024)、センサーが大きいという事はピクセル面せはより大きくなっています。より大きなセンサーと新しいすべてのモデルのƒ/1.6レンズを組み合わせて、iPhone 12 Pro Maxの1×広角カメラは、昨年のiPhone 11モデルよりも87%多くの光を取り込めることになります。センサーだけではなく、センサー周りが広くなったことに加えて、新しいiPhone 12 Pro Maxの1×カメラのセンサーは手振れ補正機構OISを搭載しており、Appleによると、写真とビデオの両方にセンサーを動かして写真のブレを抑制します。この手振れ補正機構は2秒の露出までをハンドヘルドで撮影できるとの事です。
よって、全てのiPhone 12モデルは、昨年のものよりもCPUやGPU高速であり、性能アップした1×カメラレンズを持っていますが、12 Pro Maxはより大きなセンサーと手振れ補正機構を備えています。
望遠レンズはProモデルだけのレンズです。ただし、iPhone 12 Proでは、2×f/2.0のレンズで、52mmレンズと同等の画角を持っています。iPhone 12 Pro Maxには、65mm相当の2.5×f/2.2のレンズが搭載されています。センサーは実質的には同じらしいですが、ここでも差が見受けられます。2.5倍は2.0倍よりも倍率的には「良い」のですが、光の取り込み量としてはƒ/2.0の方がƒ/2.2よりも「優れている」のです。低照度下では、数値上ではiPhone 12 Proのƒ/2.0の絞りがiPhone 12 Pro Maxのƒ/2.2よりも有利になるかもしれませんが、実使用上はほとんど差異がないでしょう。
ついでに、倍率表記も混乱しますね。Appleは、「4×」(iPhone 12 Pro)と「5×」(iPhone 12 Pro Max)の「光学ズーム範囲」を推進することによって、混乱が生じています。2×と2.5×のレンズから4×や5×の光学ズームが出ているとの事です。光学ズーム範囲は超広角の0.5倍レンズから望遠の2×/2.5×レンズまでの光学ズームの全範囲です。でも望遠レンズの表記は52mmではなく2×/2.5×なので、混乱しがちです。でもマーケティング的には4×/5×が良く見えますね。
Appleのレンズの呼び方は以下のようになっています。
0.5倍:超広角ウルトラワイド
1×:広角ワイド
2/2.5倍:望遠
でも実際に使う時のイメージは以下の通りです。
0.5倍:ワイド/ズームアウト
1×:レギュラー
2/2.5倍:望遠/ズームイン
私にとって「1×」というのは、「標準」を意味しています。一眼レフや昔のカメラの定義だと「標準」というのは50mmのレンズのことですが、「一般的」という意味での「標準」はこの広角1xレンズだと思っています。
カメラシステムの違いをまとめると、最大の違いは、望遠レンズの存在です。加えて、iPhone 12 Proモデルでは、低照度下での高速オートフォーカスとナイトモードのポートレート撮影を可能にするために使用されているライダーセンサーの存在も挙げられます。
すべてのiPhone 12モデルは、Dolbyビジョン10bit HDRビデオの撮影をサポートしています。iPhone 12とiPhone 12 Miniのみ30 FPSでDolbyビジョン HDRをサポートしています – Proモデルは両方とも60 FPSまでサポートしています。
AppleのProRAW機能は、内蔵のカメラアプリとサードパーティのカメラや写真編集アプリ用の新しいAPIを使ってRAW画像を撮影できるようになりますが、iPhone 12 Proモデルのみに搭載されています。
iPhone 12の全モデルは、同じCPU、GPU、Neural Engineを搭載したA14 SoCを搭載しています。しかし、ProRAWがiPhone 12 Proモデルに限定されている技術的な理由があるかもしれません。iPhone 12 ProモデルはiPhone 12とiPhone 12 Miniよりも50%多くのRAMを搭載しています(6 GB に対して 4 GB)。それは、ProRAWと60 FPSのDolbyビジョンエには、RAMを必要とする機能かもしれません。
すなわち、iPhone XSやiPhone 11 ProではMAXにディスプレイサイズ以外の違いはありませんでしたが、iPhone 12 においては最高の動画を録るためにはいずれかのProモデルを、最高の写真を撮るには手振れ補正機構もあるiPhone 12 Pro Max一択となるわけです。