中間カメラの立ち位置について。

人は変化に順応するのが遅いと感じる時があります。多くの場合、古き良き時代の事もありますが、革新に対しての順応性が必要です。時代錯誤的な偏見のために革新を拒否するのはもったいない気がします。小型センサーのスマートフォンカメラの出現で、小さいセンサーによる写真を考え直す必要があります。(少なくとも私の中では)

RX100III

同様に、多くの写真家は、発売当初のフォーサーズセンサーやマイクロフォーサーズセンサー搭載のカメラは衰退する運命にあると予測しました。オリンパスとパナソニックはなかなか頑張っていると思います。
しかしもう一歩先の、中間カメラ、いわゆるブリッジカメラにも注目してもいいと思います。

初期のデジタルイメージングカメラメーカーは、フルサイズセンサーの実装に多くの問題を抱えていました。ニコン、ペンタックス、サムスン、ソニーなどのほとんどのメーカーは、長年にわたってAPS-Cカメラの作製に時間を費やし、小さな撮像素子の長所を称賛していましたが、35mmカメラで育ったユーザーはフルフレームセンサーを究極の目標として部分があります。フルサイズ信仰に近いものです。そして、大きなセンサーを搭載したカメラは市場を牽引し続けました。一般のユーザーが望んでいたものは比較的安価なフルサイズカメラでしょうが、カメラメーカーが実現するのに苦労したはずです。長らくは価格だけが問題だったような気がします。一ユーザーとしてはレンズの資産を使いたいという要求は理解できますが、今やフィルム時代のレンズをそのまま使うより、マイクロフォーサーズ等で専用の高性能レンズを使用した方が質の良い写真が撮れる時代になりました。
現在、オリンパスとパナソニック以外のほぼ全員が市場でフルサイズモデルを販売しており、ほぼ25万円一辺倒です。
フルサイズカメラが販売されるとすぐに、次のレベルの製品の渇望が始まりました。現在、高価な中判カメラが市場に参入し始めました。私自身、Hasselblad X1S II 50Cが欲しいです。とは言え、現在は撮影するのが楽しくて大きな差別化を誇っているカメラにが市場に多く見えます。例えば、富士フイルムのAPS-Cカメラですが、本当に高性能で良いレンズを作り、かつ大口径で、フィルムシミュレーションなどあります。また、静止画と動画の双方に特化したカメラ、パナソニックのGH5とかも面白いアプローチです。
フルサイズカメラでの動画撮影は2008年から2015年まで大流行しており、一部のテレビドラマもキャノンで撮影されたものもありました。多くのビデオ撮影者や映画製作者は極めて浅い被写界深度を得る方法としてフルサイズ一眼レフカメラを用いました。被写界深度の狭さのため、被写体に焦点を合わせるのが難しくなりました。特に動体では難しいです。
話を戻すと、中判センサーや高解像度フルサイズセンサーに向けた高性能主義への市場があるのと同時に、反対にも市場があると思います。デジタルカメラの黎明期に囁かれた、非常に優れた性能で先進的な技術を備えた小型のイメージセンサー搭載のカメラも価値があると思います。センサーが小さければ必要とする像の大きさも小さくなり、広いズーム領域と長焦点距離(狭い画角)のレンズが搭載可能です。今の技術でこそ小さいセンサーが光ります。
ただでさえ今は、コンピューターによる演算で写真撮影の幅が広くなっています。被写界深度を制御するために、フルサイズで85mm F1.4レンズで撮影する必要がなくなりました。最新のiPhoneには、ポートレートの背景をぼかすモードがあり、粗こそあるものの非常に良い仕上がりです。今後世代を重ねる毎にもっと良くなるでしょう。
これを念頭に置いて、ひとつの選択肢として映画製作者のプロやアマチュアにとっての1インチセンサー近傍が美味しいところかもしれません。より小さなフォーマットの方が広いズーム範囲を光学的に達成でき、またカメラ全体の小型軽量化も見逃せません。動画において、より大きく重いセンサーでよりもはるかに効果的な画像安定化が可能になります。手振れ補正機能を代表に、センサーを動かしたり信号を取り出す作業が軽減されます。
より小さな撮像素子の高速な電子出力情報は、より高速なfps、より優れた4Kビデオなどの機能を持つ動画機器を意味します。ポストフォーカス、フォーカススタッキング、マルチフレーム、高解像度イメージングなどの静止画像機能も可能です。より小さなセンサーはより少ない熱を生成し、暖かい条件下でも長時間熱によるシャットダウンなどの不具合なく、動作する可能性が高いです。
実は、私はかつてのニコンのVシリーズの1インチカメラ(アドバンストカメラでしたか)に多くの希望を持っていました。あの爆速AFと小型ながら密度の高いボディがしびれました。32mm F1.2レンズなど、当時の一眼レフカメラ用のレンズと比較しても引けを取らない技術が詰まっていました。
被写界深度の浅い写真撮影も楽しいですが、前面に焦点が合っている写真も見ていて気持ちいいものがあります。その昔、ロバート・フランクの「アメリカン」の作品は、それまでの大判カメラで撮られた写真と比較して、フルサイズと同じ面積の35mmフィルムで撮られた写真とそのカメラをおもちゃ扱いした人もいたそうです。つまり、小さな『センサー』である35mmフィルムでは4×5(101.6mm x 127mm)や8×10(203.2mm x 254mm)にとても対抗できないと揶揄されていました。今の時代に、同じように小さいセンサーとフルサイズを比較していては、当時の大判信仰と何ら変わりません。
例えば、Lumix LX100を極めたらどうなるか、とか興味ありませんかね。非常に大きいEVFに、高性能高倍率ズームに、大きなバッテリーを今のボディより1~2周り大きいものに入れる、とか。使用できる小型カメラ。現在のデジタル一眼レフのフルサイズユーザーは、フランクの時代の中判および大判カメラユーザーです。ノイズに対する嫌悪感、そして究極のシャープネスを必要とする幻想が今の時代の現状です。
フルサイズや中判デジタルが悪いと言っている訳ではなくてね。選択肢を自ら狭めていくのがもったいないだけです。

タイトルとURLをコピーしました