GRのフィルム版のレンズは高い性能を誇り、そのコンセプトがレンズ断面図から見て取れますが、デジタルのGRはどうでしょう。斜め写しでカッコいいですが、なかなかHPのレンズ断面図ではわかりにくいですね。
特許公開番号2013-250534を見てみましょう。レンズ形状が酷似していますね。(特許検索はコチラ)
RicohのHPの絵と比べてみると、前から順に対称っぽい二枚のレンズと、凸の接合レンズがあり、絞りを介して接合レンズと凹レンズの5群7枚構成です。非球面は2面で、一番前のレンズの像側の面と、一番センサーに近いレンズの像側の面です。
高屈折率低分散ガラスもあり、絞りの前後のレンズと一番センサーに近いレンズの3枚です。これらのレンズは凸レンズで、光学パワーを確保するために高屈折が必要ですが、軸上色収差や倍率色収差の低減のために低分散ガラスを使用しています。
最も大きい最後の一枚のレンズは凹レンズなので、テレフォト化となりバックフォーカスを短くしています。この凹レンズで生じる収差は、前面の凹レンズで補正しています。
特許の内容にしても、斜め入射の光線が大きくても性能を確保できるセンサーの開発によって高性能で小型のレンズが設計可能としています。GXRの28mmモジュールがレトロフォーカスで大きいのに対し、ほぼ同じスペックのレンズでありながらGRのレンズが小さく薄い理由です。
【0009】デジタルカメラの撮像素子は、画素ごとに色フィルタやマイクロレンズを有するため、射出瞳位置を像面から遠ざけ、周辺光束が撮像面に対し垂直に近い角度で入射するようにするのが良い。 この目的には、レトロフォーカスタイプの結像レンズが適しており、従来から多く用いられているが、レトロフォーカスタイプを採用すると、結像レンズ全長(最も物体側の面から像面までの距離)が大きくなりがちである。 近年、対角長:20~45mm程度の比較的大きな撮像素子においては、オンチップマイクロレンズの改良や最適化、画像処理の進歩等により、周辺光束の擦像面に対する入射状態として「ある程度斜めの入射」も許容されるようになってきている。 即ち、具体的には、最大像高において主光線と光軸とのなす角が35~45度程度でも十分に許容できるようなシステムを構築可能であり、「周辺光束の垂直入射」と言う条件に拘束されることなく「より小型化に適したレンズタイプ」を選択できるようになった。
やはりレンズの形態も「略対称型」とする、基本的には対称でありながら工夫が施されているレンズです。
デジタルカメラのGR及びGRIIのレンズは、フィルムカメラの高級コンパクトカメラのGRと同じコンセプトで設計されていることがわかります。こうやって技術や思想が脈々と受け継がれているのは、GRユーザーとして嬉しいですね。