携帯電話が公共の場での携帯電話の使用禁止か否かが、議論を呼んでいます。携帯電話等の移動体通信のマナーが声高に叫ばれ、社会問題とさえ化しているのが現状です。
この問題について、鉄道各社では少し異なった措置をとっています。関東の鉄道会社は車内での携帯電話使用を事実上禁止とは行かないまでも、極力控えると言う呼びかけ。それに対して関西の鉄道会社はソフトにマナーを呼びかけるに止まっています。この呼びかけ方の趣旨には、それほど大きな違いはないのですが、そこにある違いは何なのか。これは旅客をとらえる姿勢にその違いの原因があるのではないかと…。
前提として、携帯電話を電車内で使うにあたり、考えるべきことを示しておきましょう。基本的には、各個人のマナーの問題。公共の場では、むやみやたらと他人に迷惑をかけない、これは基本的なことであると考えます。マナーも守れない人間に、個人の自由とか、人権侵害などと称し、他人の迷惑も顧みず、好き勝手にする資格はありません。マナーの基本さえ踏まえれば、どういう行動が望まれるかは普通の人ならば、簡単に理解が出来るはずではないかと思いますが。 電車内での携帯電話使用が疎まれる理由は、主に着信音と話し声です。
着信音は、バイブレーター等を使えば問題が解決できるはずです。しかしバイブレーターの困ったところは、身体に密着しておかなければ全く無意味になってしまうところです。しかし、邪魔なためか、ハンドバックや、カバンなどに入れて着信音を鳴らす人の多いこと多いこと。ポケットに入れてもバイブレーターモードにしない人も結構見かけます。ファッションを気にしてかばんの中に入れておいてけたたましい音を鳴らすのはあなたの勝手ですが、良識な判断で、心がけてほしいものです。せめて公共の場では。
話し声については、最近では小声で話しても通話できる機種が普及しています。しかし大声でしゃべる人も目立つのは事実です。若者の中には、電話が多くかかってくれば来るほど、それは友達が多い証拠だと思い込んでいる者もいて、一種、自慢のカテゴリーとなりつつあり、間違った常識が樹立しつつあります。一方では、電話よりも大きな声でしゃべる人たちも多々います。大きな声でしゃべるビジネスマンを叱る人など、そうはいないでしょう。それに比べれば携帯電話の話し声など、注意さえすればかわいいものです。電話内での話し声やわめき声は放置されているのに、携帯電話ばかり騒がれるのもおかしな話ではあります。 車内での携帯電話の使用は、他人に迷惑をかけさえしなければ、ある程度認められてしかるべきものであり、それが時代の流れでもあります。
ところが鉄道会社には、次々と乗客の苦情が持ち込まれます。 旅客の苦情に対応しようとする意気込みは、十分に伝わりますが、実際に手を打つのは難題であります。マスメディアが携帯電話騒動を、センセーショナルにとりあげたので、鉄道会社も対応を急務と思ったのかもしれません。しかし、このような問題は公共マナーの問題であり、他人に迷惑をかけないという、必要最低限のことができれば、このようなことに力を入れる必要もなく、その分、多方面へのサービス強化が出来るはずです。一部の不心得な旅客が鉄道の運行コストを押し上げているのには困ったものです。
面白いことに、対応に東西の違いが出ました。マスメディアによると、関東では「禁止」の姿勢、対する関西は各社とも「呼びかけ」でした。この違いの根底にあるものは何でしょう。関西地区の鉄道は、競合区間が多数あり、大阪~京都間では、JR・阪急・京阪。大阪~神戸間ではJR・阪急・阪神。大阪~和歌山間ではJR・南海。大阪~奈良間ではJR・近鉄。大阪~名古屋間では新幹線と近鉄が競合しています。大阪~京都間では阪急・京阪共に特別仕様の特急列車を走らせて、車内公衆電話を設置したり、テレビを設置して旅客サービス向上に努めています。このような区間が関東では稀であるのも要因の一つです。関西地区の鉄道会社には、乗客へのサービスが主体であるという観点が他社に比べ強くあるのが実情で、その結果が携帯電話の使用についても、乗客に不快感を与えないソフトな表現にあらわているのではないのでしょうか。 一方、関東地区の鉄道会社はまだまだ、乗客を運ぶだけの輸送機関にすぎない兆候があります。サービスは二の次としてとらえているのも事実。競合と言えるほどたいした区間もないのでついつい乗客を「管理する」という発想にいきがちです。
車内の携帯電話を防止する決め手として注目されているのが、電波の遮断出来る車両の開発です。しかし完璧な遮断をするのは難しいでしょう。防磁細工を施しても、それに対抗して携帯電話の感度を上げた機種を開発するに違いありません。いたちごっこになるなるのは目にみえており、このようなことに鉄道会社の費用を遣うのもどうでしょうか。そのぶんだけ運賃が上がるのですから。
繰り返しますが、携帯電話の使用は電車内に限らず、公共の場での使用はマナーの問題なのです。このようなことに、鉄道会社の費用がかかるのは悲しいことです。他人の迷惑を何ら考えることもできず、やかましい音をたて続ける人間は第一に問題ですし、人権の盾を振り回してそんな人間にうろうろされては社会の迷惑です。人権というものは人と人との尊重の上に成り立つものです。他人の迷惑を考えられない輩に、人権を振り回されては二重の迷惑です。しかし一律に規制しろという論議も変な話です。迷惑をかけないよう、細心の注意を払っている人もいるのですから。規制があるからやってはいけないのではなく、他人に迷惑をかけてはいけないからやってはいけないのです。 もうひとつ考えなければならないこととして、社会においてある程度の迷惑はお互いさまです。他人に全く迷惑をかけずに生きるというのは難しいことです。それでも他人にむやみに迷惑をかけないという姿勢はもちろん必要です。根底に必要なのは「他人に迷惑をかけない」という旅客マナーです。電車内で迷惑行為といわれるものは、携帯電話だけではありません。世論で話題になっているから措置するのではなく、迷惑行為全体に対する包括的な対策が、鉄道会社には必要なのかもしれません。
結局のところ、鉄道会社で出来ることは、マナーの呼びかけまでです。鉄道会社は公安ではありませんから、規制にまで手を出すのは筋違いですし、サービス業なのに「旅客を管理する」という発想もあってはなりません。旅客をむやみに規制するのも筋違いですし、そんなことを鉄道会社に要求する旅客もまた、筋違いも甚だしいとは思いませんか。