ここ最近のiPhoneの最も優れた点はカメラだと思います。
私はスマートフォンでのカメラ撮影は慣れていませんが、少なくとも普通のカメラを使いこなせればスマートフォンの撮影は比較的簡単で、場合によってはより良い写真が撮れると思います。逆に普通のカメラを使い慣れていない人にとって、難しい理論や手法を理解せずとも良い写真を簡単に撮れるというのは非常に魅力的と考えます。
iPhone 7のカメラ、特にiPhone 7 Plusのデュアルカメラは幅広いシチュエーションで簡単に良い写真を撮れる点で先進的だと思います。今までの広角相当のカメラの向上と、望遠カメラの搭載で撮影幅が広がっただけでなく、撮影の際の組み合わせがシームレスです。技術的にはカメラのソフトウェア処理を助けるカメラ専用のプロセッサが速くなったとか。解像度も12Mでより長い露出時間、明るいFナンバー、DNG(RAW)の撮影等、どんどん進化しています。DNGのデータにより、いわゆるポストプロセスに対応でき、データに「厚み」が出ると思われます。光学、電機、ソフトウェアとアルゴリズムを駆使して写真を撮るのです(25ミリ秒に1兆計算)。スペックよりも実際の写真がどう写るかの方が大事とは言え、凄いと思います。
レンズも2種類、広角の28mm相当と望遠56mm相当(私の感覚では中望遠ですが)で汎用性が高く、連続的ではないにしろタップしてのズーム機能とデジタルズームがあります。派手さはありませんがFaceTime用のカメラも解像度が上がっています。
ではこのカメラは写真のズームだけのためかと言うとそうではなく、多彩な用途が考えられます。焦点距離が異なるとはいえ、人間の目のように少し離れて配置されているので三角点で距離の測距が可能です。写真の平面上の位置に距離の情報が加わると背景ボケも可能ですが、その情報で他にも色々とできそうです。
このようにハードウェアとソフトウェアの機能を合わせる事で多くの事ができ、古典的なカメラメーカーが達し得ない領域だと思います。古典的なカメラメーカーはレンズやカメラのハードウェアを作るのに長けていますが、ソフトはどうでしょうか。コンパクトカメラや一眼レフカメラの売り上げの衰退で研究開発費に回せる費用は少なくなれば、更なる悪循環となるかもしれません。AppleはiPhoneの巨大な売り上げから、センサーやレンズ、イメージプロセッサ等の開発に投資する事が可能です。
今のSNSや写真投稿サイトではその多くがiPhoneの写真です。通常の一眼レフやミラーレス一眼カメラと、高性能レンズでより良い写真は撮れるものの、「パソコン付きカメラ」のiPhoneは写真を撮った後にSNSやインターネットで容易にシェアできるだけでなく、先進的なOSのiOS10で整理までしてくれます。年月で仕分ける事はもちろん、ロケーション、写真の種類(「海の写真」など)分類をパソコンがしてくれます。
一眼レフカメラやミラーレス一眼のデジタルスチルカメラ以外のデバイスでは既にハードウェアとソフトウェアの融合が見られます。セキュリティシステムのカメラで人体検知、車のカメラ、VRヘッドセットにもセンサーとカメラがあります。XBoxのKinectもレーザー光を照射し、人間の体に当って戻って来る光をカメラで検知し、その情報をソフトウェア(ゲーム)に利用するわけです。VRではMicrosoftのHoloLensやOculus兼FacebookのRiftにも多くのカメラとセンサーが付いています。観賞用の写真を撮るカメラだけがカメラな訳ではありません。
今の時代のカメラは、ハードウェアと同時にソフトウェアも同じくらい(もしくはそれ以上)に重要だと思います。iPhoneのカメラの凄いところは焦点距離や解像度ではなく、ハードウェアとソフトウェアの融合だと思います。