別のドメインで運営している光学設計のサイトを更新しました。『光学設計のレンズ体系:光学設計者の道具箱』というタイトルで執筆しました。
またもや4万5000ワード、印刷したら170ページの大作です。
この道具箱は光学設計のレンズ体系を歴史を辿って紹介していますが、教科書でも調べられるその多くの数式を省き、実用的な内容にしてみました。
最初期の天体望遠鏡のレンズ設計や、レンズ設計や光学設計の概念すらない時代から人がどう思考錯誤し、それが今のレンズ設計ソフトで計算すると実に理にかなった光学設計方法である事を示し、深堀しています。技術の発展と共光学設計でできる事が多くなり、そろばんで光学設計をやっていた時代や、最初期のコンピューターのレンズ設計の時代を振り返ります。トリプレットからテッサー、ガウスレンズやテレフォトレンズ、ズームレンズやタンデムレンズと発展していきます。
最新の撮像レンズであるステッパーレンズや、複雑な形をした携帯電話のレンズ、非球面と自由曲面の使い方、レーザー光学系と照明光学系の設計まで紹介します。
光学設計の方針は光学系や光学構成を見い出す事から始まりますが、光学設計の経験が少ないと迷走する事がしばしばあります。最初期のレンズからレンズ体系を学ぶ事で、全てのレンズ構成のつながりを実感できると思います。
そして、実際のレンズ設計の構成を図やデータで紹介します。
私はレンズ設計を生業としていますが、ほぼ全てのレンズ設計を光学設計ソフトで行っております。これらのソフトは多機能かつ高機能ですが高価でもあり、多くは会社支給で使用している方が多いと思います。
光学設計をソフトでただ闇雲にレンズを増やしてもなかなかいい解は得られません。必要な性能を出すためにどのような構成が理にかなっていて、与えられた仕様から解を得るのが光学設計者の仕事です。
ただ『経験を積めばいい』と言い放つのはあまりに簡単です。
光学設計をやっていく(学んでいく)中で、
「光学設計のレンズ構成が多くて訳がわからない」
「このレンズ構成はなぜ使われているのだろう?」
「この光学設計仕様ではどのようなレンズ構成がいるのだろう?」
「このレンズ構成で本当に合っているのだろうか?他に良い構成はあるのではないか?」
「このレンズ構成は他でも使えるのではないか?」
と自問自答する事は多かれ少なかれ、あります。
レンズ設計はパソコンの能力で無理くり性能を上げようとしてもなかなかうまくいかず、深い思慮を必要とする反面、経験による閃きも重要な、一筋縄ではいかない仕事であり、学問でもあります。
収差を取り除くためにレンズ構成を考える必要がありますが、トリプレットひとつ取っても、大変な思考をがなされています。レンズ数が多いからと言って性能が良くなるわけでもなく、よく考えて設計をします。
システマチックに光学設計できる光学系はなかなかなく、過去の経験を必要とするために、レンズ設計の成り立ちを理解すると仕事がそれだけ楽になると考えます。
光学設計の本を読み倒し、演習でレンズ設計を数多くこなす事で、レンズ構成の網を脳内で作り上げ、仕様書をもらう度にその知識の網で捉える作業をしています。
形として作り上げていく事で、自分も大変勉強になりました。自分のための手引きとなりそうです。
光学設計とレンズ設計の発展に終わりはありません。常に新しい設計が出てくる可能性があります。レンズ設計者として新しい問題に直面する事で、それを解いた時に得られる知識と経験こそかけがえのないものになります。
英語で書いているのですが、何ヶ月もかけて仕上げました。誰かの役に立てれば幸いです。
The Ultimate Guide to Lens Design Forms: The types of optical systems in a lens designer’s toolbox